【2025年最新】処遇改善等加算の一本化 賃金制度に影響する3つの変更点

こんにちは。社会保険労務士法人ワーク・イノベーション代表の菊地加奈子です。
昨年末に施設型給付等の処遇改善等加算の一本化の概要が示され、少しずつ詳細が明らかになっているところですが、どのように対応すればよいか、不安に感じている事業者も多いことでしょう。
6月12日のセミナーで実務上の具体的なポイントについて解説しますが、今回は一本化によって生じる影響について少し深掘りしてみたいと思います。
1.職員の給与が引き下がってもよい?配分ルールの見直し
令和2年度改正で、基準年度賃金に処遇改善等加算を含めるようになりました。
待機児童も多く、ほとんどの施設で定員いっぱいの運営をしていましたから、処遇改善等加算についてもほぼ満額が入ってくる状況が続いていたことも背景としてあるでしょう。
「新規事由なし(加算区分や加算率に変更がない)」の場合は、処遇改善等加算の加算総額も変わらないため、現状維持でよく、人勧分の引上げや法人独自の定期昇給があればその分だけを昇給原資にすればよい、という運用となったのです。
しかし、ここ数年で少子化が急速に進み、園児の減少の問題が生じるようになると、施設に入ってくる処遇改善等加算の原資が減額されるという問題が起こるようになりました。
基準年度賃金を引き下げないために法人が減額分を補填しなければならないといったケースも多くみられます。こうした背景から、一本化では基準年度賃金に処遇改善等加算を含めないという変更がなされています。
当年度の園児数に基づいて算出された加算額を配分すればよい、つまり「園児が減って加算総額が減額になった場合、職員の給与が引き下がったとしても賃金改善が承認される」ことを意味します。
事業者にとっては不安が払拭されたように見えますが、職員にとっては不利益を被る可能性も大いにあります。現状の賃金制度を改めて見直し、不利益を最小にするための対応を考える必要があります。
2.年功序列の給与体系が不要になる?基準年度比較方法の見直し
これまで、基準年度賃金との比較で非常に複雑だったのが、「今いる職員が前年度も同じ経験年数・同じ等級だったと仮定して比較する」というルールです。
経験年数や等級に応じた賃金水準が引き上がっていることが求められるため、このような対応となっていました。今回の改正では、「実際に支払われた賃金の比較」と変更されています。
これが何を意味するかというと、賃金制度への裁量が広がったと捉えることができるのではないでしょうか。
これまでは自治体等の第三者に説明しやすくするために、どうしても年功序列の賃金体系を崩せなかったものの、経験年数等の比較が取り払われたことで職員一人一人の能力や職務・職責、意欲等を適正に評価するしくみを導入しやすくなるということです。
昭和的な年功序列の賃金体系に縛られていた保育業界にとっては大きな変化といえるかもしれません。
3.賃金体系の明確化は必須?賃金改善原資の明確化
実績報告の負担軽減が図られていますが、昇給の種類についてはこれまで以上の区別が求められるようになっています。
「定期昇給」「処遇改善等加算の配分」「人勧分」「施設独自の加算」と、それぞれ区別して報告する必要があり、賃金規程や個別の労働条件明示においては職員にわかりやすく説明できることが重要です。
「一本化」という言葉だけを捉えると形式的なところに目が行ってしまいますが、実はもっと大切な部分で対応すべきポイントがあるのです。セミナーでは制度・実務両面で解説しますのでぜひご参加ください。
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執筆者
社会保険労務士法人ワーク・イノベーション 代表 菊地加奈子氏