日本初の保育業界特化型HRSaaSを展開するカタグルマが危惧する「保育士不足」問題と解決策
2021/12/24
少し前に「保育園落ちた日本死ね」と題したブログが大きな注目を集めたニュースが記憶にある人は多いでしょう。「待機児童」問題が大きく取り上げられ、国を挙げて保育施設の充足が進められました。
しかし、施設が増えてもそこで働く「保育士」たちが満足にいなければ意味がありません。待機児童の問題が解決されるとともに浮き彫りになってきた、保育士不足問題が事故の増加など新たな問題を引き起こしているのです。
そのような保育業界の課題に対し、業界初のHRSaaSで解決に挑むのが私たちカタグルマ。今の保育業界が抱える課題とは、どのような未来を見据えてサービスを開発しているのか。代表の大嶽とCTOの川に話を聞きました。
待機児童問題を解決するための施策が生み出した、業界の新たな問題
―まずはカタグルマを起業したきっかけを聞かせてください。
大嶽:私は2004年に経営コンサルファームに入社し、翌年から教育・保育業界に特化してコンサルティングを行い、約16年に渡り保育業界の様々な課題に向き合ってきました。これまでも様々な課題を抱えてきた保育業界ですが、今は大きなターニングポイントを迎え新たな課題に直面しています。
その解決のために、社内で新規事業を立ち上げることも考えましたが、よりスピーディな経営判断が必要だと思い、昨年起業に至りました。
―保育業界が抱える新しい課題とはなんでしょうか?
大嶽:保育士不足による人材の質低下と事故や保育者トラブルの増加です。保育業界はここ10年ほど、待機児童が大きな問題になっていました。しかし、国を挙げて保育園を増やしたことで、徐々に問題は解消されつつあります。ただし、保育園が増える一方で、今度はそこで働く保育士が足りていません。
保育園は、国の制度によって子供の人数に対して必要な保育士の人数が決まっているため、保育士が足りなければ、いくら施設が増えても子どもたちを預かれないのです。
加えて、保育士の不足によって増えているのが保育園の事故です。保育士が足りなければ子供に十分に目が届かず、保育園における事故件数はここ5年で3倍にも増えました。保育園を増やすことは「待機児童」問題の解決策になった一方で、新たなリスクを孕んでいたのです。
脱「勘と経験だけの園運営」を促進する業界初HRSaaSの意義
―カタグルマのサービス内容を聞かせてください。
大嶽:私たちのサービスは保育業界に特化したHRSaaS。これまで主流だった勘と経験による保育園運営から、組織や人材の情報を一元管理し職員一人ひとりに最適化された運営を実現するためのツールです。
保育士不足を解決するには採用して人材を増やすことも重要ですが、保育士一人ひとりが成長しやりがいを持って働ける環境づくりも欠かせません。私たちのツールを使うことで、勘や経験だけに頼らない効率的な人材育成とマネジメントが可能になります。
―嫌な言い方かもしれませんが、保育士ひとりあたりの園児の数が決まっているなら、保育士が成長しても売上には直結しないですよね?
大嶽:確かに保育士の人数によって預かれる園児が決まっているので、満員の場合はいくら職員が成長しても売上増加には繋がりません。しかし、保育士のレベルが低ければ事故に繋がる可能性も高くなり、保護者からの信頼を失えば転園されてしまうリスクもあります。満員の状態を維持するためにも、保育士の成長は欠かせないのです。
また、待機児童が発生するほど保育園の需要が高いのは都市部だけ。地方では少子化が進み定員割れしている園がほとんどです。厚生労働省は令和7年を境に利用する児童数が減少するとも発表しており、これから都市部以外での需要は激減していきます。
そのような中で、保護者に信頼してもらい子供を預けてもらうには、レベルの高い保育士の存在が必要不可欠なのです。
―園の運営において保育士の質が重要なファクターなのですね。
大嶽:それを表すのが保育園運営にかかる費用の7割が人件費であるという事実です。サービス業は一般的に人件費が高いものですが、ここまで人件費の割合が高い業界はありません。保育園のサービスの質は、保育士の質で決まるというのも言い過ぎではないでしょう。
保育園は日本の未来を支える子どもたちを預かる場所ですから、保育園の質を左右する保育士たちには日本の未来がかかっているとも言えます。大げさに聞こえるかもしれませんが、保育士の成長を促し、よりよい園の運営を支援する私たちのサービスは、日本の未来づくりに直結していると思っています。
「サービス改善と新機能開発の両輪を進めていく」サービスと開発の現状
―サービスの開発状況についても聞いていきたいと思います。まずCTOの川さんが参画した経緯から聞かせてください。
川:私と大嶽は大学の同級生で、私自身はSIerでインフラエンジニアとしてキャリアを積み重ねてきました。彼がコンサル業界にいたのは知っていたのですが、そこから起業してSaaSビジネスを作ると聞いた時、IT業界にいる私なら微力ながら力になれると思い参画を決意したのです。
それまで保育業界には縁もゆかりもありませんでしたが、私も子どもを持つ身。大嶽から業界の課題を聞いた時に他人事とは思えませんでした。子どもは幼稚園に通わせていたのですが「いつもお世話になっている先生も、そんな環境で働いているのかな」と思ったら、何か力になりたいと思ったのです。
―現在の開発状況はいかがですか?
川:サービスをリリースしてから約半年弱が経ちますが、その間様々なフィードバックを頂きました。中には満足していただけず契約に至らなかったケースもあり、今は機能のエンハンス開発をしているフェーズです。
また、今はまだ最終的なサービスのほんの一部しか提供していません。既存の機能を改善すると同時に、新たな機能の開発も進めていく必要があります。今の開発組織では到底リソースが足りないので、これから組織を拡大して開発スピードとクオリティを上げていこうと思っています。
―事業としての現在のフェーズについても聞かせてください。
大嶽:まだPMFは実感していないものの、徐々にユーザーが増えてきて、PMF間近というところです。これまで100以上の施設にサービスを利用してきてもらいましたが、中には有料契約に至らなかった施設もあり、今の有料契約率はおよそ70%弱。よりサービスの質を高めて有料契約率が80%にするのがPMFの基準であり、今の目標です。
これから事業を成長させるためにプロモーションはもちろん、CS部隊なども必要になるので、来年には資金調達を予定しています。それまでにはサービスを確立させ、PMFを達成したいと思っています。
保育業界ならではの特徴とは。開発の難しさと面白さ
―既に世の中にはHRSaaSが数多くありますが、保育業界に特化している優位性を聞かせてください。
大嶽:一つは制度に対応していること。保育園は社会保障なので、介護や医療と同じく給付金や補助金、助成金といった国が定めた特有の制度があります。その分、監査なども多く国が定めたルールに則っていなければなりません。
そのルールの中でスタッフを管理するには、制度に紐付いたオペレーションが必要であり、そのためのツールが必要です。業界知識はもちろん、そこで働く人々の特性やカルチャーを踏まえたツールを開発しなければいけないため、保育業界に精通している私たちに優位性があります。
また、保育業界の男女比は95%が女性で、看護師などに比べても女性が圧倒的に多い業界。女性は男性に比べて結婚や出産、育児といったライフイベントが仕事に与える影響も大きいため、人材の出入りも激しいです。それらも踏まえて組織管理しなければならないので、既存のHRSaaSをそのまま使うのは難しいでしょう。
―川さんは業界経験がありませんが、業界知識などがなくても開発できるのでしょうか。
川:業界の知識は必要ですが、それは入社してから学んでいけば大丈夫だと思います。それよりも必要なのは、自分で考えて開発する姿勢です。SIerでエンジニアを多く見て来ましたが、よくある与えられた要件通りに開発する姿勢では、ユーザーに満足されるサービスを作れません。
言われた通りに作るだけでなく、自主的に業界構造や問題などを調べて、どのようにシステムに落とし込むのか考える力が求められると思います。
―開発していて難しいと思うことがあれば教えて下さい。
川:保育業界にはITを不得手とする方も多いので、そういう方でも使いやすいシステムを作らなければいけません。裏側でどんなに複雑なシステムを組み込んでも、表では限りなくシンプルで使いやすく作る必要があります。決して難易度が高い開発でなくても、ストレスなく使えるように徹底してユーザー視点で考えていくと頭を抱えますね。
その表と裏のバランスを考えるのが難しさであり、同時に面白さだとも思いますね。
今後も保育業界の負を解決していくカタグルマ。メンバーに求められる問題意識
―どのようなエンジニアなら、今のチームにマッチしそうでしょうか。
川:一つは開発スキルの高い方です。私はインフラ領域出身なので、決して開発スキルは高くありません。これから入ってもらう方には開発を専門に行なっていただき、お互いにスキルを補完し合っていければと思っています。
また、当然のことですが保育業界に興味・関心の高い方です。これから新しいプロダクトやサービスも作っていきますが、基本は保育業界に関わるもの。業界に対する興味・関心がなければいいサービスは作れません。
例えば私は、大嶽から話を聞いた時に感じた「先生たちの力になりたい」が、開発のモチベーションになっています。同じように身内で保育業界に携わっている人や、子供を預けていた方は問題意識を持ちやすいのではないでしょうか。
―今後もサービスを増やしていくとのことですが、どのような展開を想定しているのか聞かせてください。
大嶽:一口に保育のHRといっても、そこには採用から始まって雇用契約やオンボーディング、スキルアップに離職など様々なシーンの課題があります。今はその一部にしか対応できていませんが、これから各シーンの課題を解決できるようなサービスを作っていきたいと思います。
また「子供に関わるリソースを最適化したい」というビジョンを掲げているため、決してSaaSにこだわる必要はありません。必要に応じてコンサルやBPO、キャリア紹介などのサービスも展開していくつもりです。さらにいえば、人材以外にも見直すべきリソースはあるので、それらも含めたトータルソリューションを提供していきたいですね。
―最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
川:これから直近でジョインしてくれる方は、カタグルマのコアメンバーに近いポジションとして参画してもらうことになります。それはエンジニアとしては大きなやりがいになると思いますし、めったにないチャンスのはず。
サービスを含め、会社の舵取りもしていきたいという方はぜひ一度話を聞きにきてください。
大嶽:私たちの仕事は、日本の未来を支える子供たち、そしてその子どもたちを支える保育士や保護者の方を支えることです。そんな領域でSaaSを展開しているのは私たちしかいません。
日本初のサービスを作りたいという方は、ぜひ一緒にチャレンジしませんか。